最近読んだ本。何年も前から読みたくて、でもなかなか読み進めず改めて本棚から手に取った本です。タイトルは「音の神秘」。イナーヤト・ハーンというインドの音楽家の書いたものや、講演録です。
インドの人の本というのは日本語にするといちいち大げさに感じてしまうこともあり(笑)なかなか読みにくいのですが、音楽と宗教、波動、音、声、言葉、など広範囲に渡って話が繰り広げられます。
実感をもって語っているのが伝わって来て、音楽を深く実践している人の感覚として共感することが多くありました。魂、霊、など言葉にすると現代の日本では少し胡散臭く感じてしまうもの。しかし、昔から人々が当たり前に大切にしてきたものや考え。そんな言葉が沢山出てきます。そして人間の本質とはという哲学的なところに触れていきます。
例えばこの本の中に出てくる「静かな世界」。
自分の体験に照らすと、たとえどんな大きな音がしていても、どれだけ多くの音が同時になっていても根底に「静けさ」を感じていることがよくあります。コンサートで集中しているときは特にそうですし、普段でもそのモードになると明るさが邪魔で電気を消して真っ暗でピアノを弾いているときもあります。音が歌って語りかけて鮮やかな世界が広がって・・・。傍からみれば真っ暗の中でピアノを弾いているという変な状況ですが、本人はいたって健全で幸せです。
おそらく芸術、アートというのは多かれ少なかれそのように、普段と違う世界を感じられるという効果?があるのだと思います。その感覚を様々な言葉を駆使して述べているのがこの本かなと感じます。多分に宗教的なインドという国の著者ですので、日本的に概念にとまどう場面も多く決して読みやすい本ではないですが、とても面白いです。
そして今回のタイトルの「ピアノ教室では何を習うのか?」の答えは、「芸術」ということになります。
ドレミを覚えて、楽譜を読んで、ソルフェージュをして、ピアノで両手を動かしての先にあるのがそこです。確かに、本質的にはドレミも何も必要ないとも言えます。そんなものは一つも知らなくてもアートは出来ますが、人間、なんでも自由にしていいよと言われても、とまどってしまい、なかなかそうも行きません。「音楽」で芸術的になるのはやはり小さいうちから総合的に学べるピアノが一番近道だと思います。
そもそも芸術は教えられるのかということもあります。それはまた次の機会に。