伊藤正の寄稿が上毛新聞に掲載されました

先日お話しいただいたオピニオン委員。上毛新聞さんのオピニオンという欄に一年を通して6回ほど寄稿いたします。

11月頃に紹介で載った時もご覧になった方から連絡をいただきましたが、今回は第一回目の文章ということもあり反響が多くありました。

テーマは「調和」

音楽を通して調和をもたらすという視点から書きました。自分自身、音楽は美しいもの、綺麗なものであるべきと思っていて、もちろん表現の種類として音楽で悲しみ、混乱、怒りなども表すことはもちろんできますが、わざわざ音楽でしなくてもと思っているので、調和している音楽が好きです。

そこから派生して、調和を広げていくという視点です。今回は導入のような形で次回からより踏み込んでいくつもりです。

以下が掲載文章です。

「心整え人も社会も調和」〜2021.12.23.上毛新聞オピニオン 伊藤正

キッチンで料理をしていると子供の弾くピアノの音が聞こえてくる」「仕事が終わって一息ついた時間にお気に入りの曲を奏でる」。時には、「コンサートで音楽を聴いて涙する」。そんな普段の生活の中に音楽のある豊かな日常。

昨年からのコロナ禍で社会的に様々な変化が起こり、心の癒やしが求められている状況です。音楽は心を整え、調和させ、穏やかな気持ちからは良い人間関係が創造され、ひいては社会的な調和につながる。そんな理想的な社会像を作るために音楽は大きな力を持っていると考えています。

特に私がウィーンで学んできたクラシック音楽は歴史的な紆余曲折はあるにせよ、調和を元に作られています。例えばピアノの鍵盤でドとその一つ上のドの音程はオクターブといい、1対2の振動比になっています。ドとソは5度で2対3。濁りの無い純粋な響きが感じられます。また、ハ長調やイ短調と呼ばれる調性のシステムも数学的で素晴らしく美しいものです。そしてソナタ形式などと言われる曲の様式に関しても長い年月を経て理性的で調和した整ったものになっています。

そのような調和を元に創造されたバッハやモーツァルトの音楽は、200年以上が経った現在も私たちの近くにあります。今、身の回りにあるものでそれだけ残るものは簡単には想像できません。それだけでも計り知れない価値を内包していることが感じられます。そして、それを実際にライブで音にできる私たち演奏者としては、その音楽の持つ深い意味と共に、調和を社会に届ける使命がある様に感じます。

私は日々、皆さんの回りに音楽が身近にあるようにという思いを込めて「音楽を一生の友達に」というコンセプトを持って演奏、教育活動を行っています。

コンサートの時に、集中して最後の音を弾き終わり、拍手までに「間」があることがあります。その間は演奏者も聴衆も音楽の深い世界から、もとの世界に戻ってくる時間のように感じ、とても暖かな空気のある大好きな時間です。精神的な穏やかさや会場全体の調和を感じられます。

また、レッスンの際には曲が仕上がってきて生徒が弾いたあとに「気持ちよかった」という感想を聞くことがあります。これは正に我が意を得たりで、音楽に没頭して表現することで、本質的な音楽の力を理解し、そこから喜びを与えられています。音楽を奏でるのに一番必要なものは「歌う」こと。歌っていると誰しも心が喜んでいるのを感じることが出来ると思います。ピアノの場合はそれを鍵盤で表現しているだけです。

以上の様な例からも、音楽が心を整え、調和させていることが分かります。次回からはそれを社会に広く届けていくための、より具体的な方策に触れていきます。

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