上毛新聞オピニオン4回目

上毛新聞の連載オピニオン。今回は早くも4回目。

今回のテーマは「興味広げ豊かな人生を」

自分の今までのこと、最近のコンサートのことだったこともあり、比較的サクッと書きました。そしてとても読みやすかったとの評判。

やはり考えながら書いたものはスッと入りにくく、スムーズに書いたものは読みやすいんですよね。小学生の時から最初の3行くらいが大変で、それからはどんどん書けるタイプなので、書く前に頭の中で大分整理されてから書き始めるのが良いです。

分かってはいるんですがなかなかいつもそうは行きません。

以下が文章です。

興味広げ豊かな人生を / 伊藤正

双子の娘たちが5歳になりました。昨年からピアノも始めました。生まれる前はどうなることかと未知の世界で不安の方が大きかったですが、今は成長を楽しみできるようになりました。週2日はパパの日にもなっています。今回は子供の頃の経験と音楽について書いてみます。

私自身、「小さな頃からずっと長い時間ピアノを練習して来たのでしょ?」と聞かれることがありますが、好奇心旺盛だったのでピアノ以外にも楽しいことは沢山あり、エジプトでピラミッド発掘!などというテレビは大好きでした。進路を選択する際も、外国でピアノって面白そうというくらいの感覚で海外に行ってしまいました。興味を持つと最初のうちはとことん追求してやがて落ち着く(飽きる)という性格ですが、波がありながらもずっと面白かったのが音楽でした。本気でピアノに向き合ったのはそこから。今も持っている実感として子供の時から世の中を見回して経験できたこと、感じたことは、それを犠牲にしてピアノだけ向いていたら無かったことで、生きる上でとても良かったと思っています。

さて、先日高崎の芸術劇場でリサイタルを開催しました。ピアノソロと歌曲の伴奏が半分ずつのプログラム。半分というのが難しく、その理由は鍵盤への指の触れ方が全く違うからです。ピアノの音はとても大きいので、伴奏の際はバランスを取るために本当に触れるだけくらいの感覚で弾きます。それがソロになるとそのタッチに加え、体の重さや腕の重さを使って演奏することになります。結果的に大きなダイナミックな表現に繋がるのですが、この二つの演奏方法を曲によって変えるのがなかなか大変なのです。

それに演奏中はどう弾こうかということを考えている余裕はありません。頭の中のベストの状態は音楽に没頭すること。歌が流れていること。テクニカルなことなど余計なことが頭をよぎるのは出来る限り避けたいことです。

では音楽に没頭するというのはどういうことかというと、それこそ舞台の上で自分をさらけ出すということです。音楽の成分は、今までの自分の経験、生きてきた環境、考え方、その時の気持ちなどあらゆるものが含まれています。テクニックは別として、最終的にはそれに行き着くはずで、音楽の本質です。音楽に進路を決めたこと、ウィーンにいるときはヨーロッパの教会の建築や美術に興味をもっていろいろな国を訪れたこと、その後の数々のコンサートや教室の経営、そんなことがすべて要素となっていると思っています。

子供の時には音楽に限らず、あらゆるものに興味をもって欲しい、そしてそれがその後の人生の豊かさに繋がるという思いがあり、自分の子供にも音楽はとても楽しいことはもちろん、運動も気持ちいいこと、本の面白さ、一つの景色を見てもいろんな見方があることなど、目一杯この世界での経験を積んで豊かな人生を送って欲しいと思っています。

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