2020年7月3日
教室を始めてほぼ10年。いろいろと経験し分かってきた事の一つに、子どもの場合のピアノ弾き方があります。
もちろん大人の場合と本質的には同じはずですが、ポイントは「指」です。
レッスンをしていて、10歳くらいまでの子がどうも音がはっきりしないと不思議に思っていた時期があります。見た感じでは弾き方は問題ないのでなぜかと考えていたところ、「指の力がない」という単純なことに気づきました。おとなと同じように弾いても力が弱いので、打鍵のスピードが遅い、結果的に音が弱いということです。
自分自身バリバリと弾くタイプではないので、もともと指を高く上げて弾くこと(音)が多くはありません。音楽的な幅を出すにはそれが良いとの考えからの演奏法なのですが、子どもに当てはめるとやはりこぢんまりとまとまってしまう。
そこで、指の強化を図ることにしました。具体的には指の運動、訓練を沢山、そして大げさにすること。大げさにする理由は、子どもがまだ指の分離が進んでいないこともあり、動きにくいものをがんばって動かすわけなので、脳から指にはっきりと指令が行くようにするためです。ある意味リハビリのようなものです。そんなことをしつつ、皆だんだんと音が出るようになってきました。
話は変わり、学生の時に有名なチェリストに室内楽の授業を受けた時、「自分は8歳で音階の練習をやめた、意味がないので」と聞き、その時は皆で、「それは先生がすごい才能があるからでしょ」と笑っていました。音階の練習というのは象徴的に言っていたのであって、実際には機械的な練習をやめたということです。ただ、それはとても本質的な話で、どの音楽の中にもただ指を動かして音を鳴らすイメージの瞬間はありません。どこにでも「歌」があるはずです。
このことは今でも良く覚えていて、自分自身でも機械的な練習はしないようにしていますし、指の訓練はしたくないと思っています。そんなにパワーをつけて大きな音が必要とも思えません。大きなホールでは大きな音が必要な場合もありますが、それはピアノという楽器にとって無理しすぎているのであって、みんなに耳をすませてもらえば良いんです。その方が音楽ができます。 というような考えがあるので、どこかで体の、または指の「訓練」的な方向になると、ほんとうは違うんだけどなぁと思うところがあります。
上記の子どもの場合の話も、大きくなれば自然に力はついてくるのだからとも思いますし、でもある程度聞き映えする音で弾いた方が評価もされやすいし、みんな嬉しいしとちょっと葛藤があります。 これが無くなってくるのが小学校高学年くらいです。リラックスした本来の弾き方に近づいて行くことができます。いつも書いているように、このあたりの年齢から体的にも、精神的にも音楽が楽しくなってくるところです。「訓練」もとりいれつつ音楽に近づいていければ嬉しいですね。