ドビュッシーの色

先日、東京で「音楽の色って何? ドビュッシーと神話」というタイトルでリサイタルを行いました。

プログラムは以下の通り。 せっかくなので解説も付けておきます。

1.デルフィの舞姫たち (前奏曲 第1集) 
ドビュッシーのピアノのための前奏曲は全24曲あり第1集、第2集に12曲ずつ収められている。この曲はアポロを祭った神殿において宗教的、高貴な姿で静かに舞う舞姫を表している。

2.プレリュード (ベルガマスク組曲 第1曲)
ベルガマスクとはドビュッシーが2年間イタリア留学したときに訪れたベルガモ地方のことを指し、そこでの農民の生活から受けた印象を音楽にしたと言われている。 ピアノを端から端まで使ったダイナミックさと繊細さを併せ持った曲。

3.亜麻色の髪の乙女 (前奏曲 第1集) 
静かな美しい景色の中にいる少女の情景を連想させる。詩人ルコント・ド・リールに同名の詩がある。「ムラサキウマゴヤシの花々の上でこの涼しい朝に誰が歌っていますか?それは亜麻色の髪の乙女、美しい桜色の唇をした。明るい夏の太陽の中で、愛の天使がヒバリと一緒に歌いました。」

4.月の光 (ベルガマスク組曲 第3曲)
ピアノ曲全体としても、有名な曲の1つ。光や色彩を表現している。ヴェルレーヌの「月の光」という詩「月明かりの中で素敵な仮面をつけた人々が古風な踊りを静かに、楽しそうに踊っているが、華奢で、はかなく物悲しい」からイメージを受けて作曲。

5.雨の庭 (版画 第3曲)
夏の暑さに乾き切ったパリの木立の上に、軽い夕立が降りそそぐ。そしてまだ雨の上がりきらないうちに燦々と太陽が笑顔を見せる。非常に繊細で、心に滲み透るような美しい版画。

6.沈める寺 (前奏曲 第1集) 
海の底に沈んでいる寺院が、過ぎ去った長い年月の奥から徐々に浮かびあがってくる情景。教会堂の鐘の音、賛美歌の後、また静かに海の底に沈んで消えていく。

7.喜びの島
幸福な恋人たちが、愛も宝も、欲しいもの全てが満ち満ちているという古代ギリシャの女神ヴィナスの島へ船出する絵画からインスピレーションを得た作品。オーケストラの様々な楽器のように、変化に富んだ音の組合せや、自在にまた正確なリズムの躍動とを、思い切り駆使している。

8.カノープ (前奏曲 第2集) 
悲しげに歌う旋律は古代エジプトの儀式とカノープ(骨壺)の寂しさをあらわしている。死の静かな世界、深い悲しみ、夜の静寂などを表す、とても精神性の深い音楽。

9.パックの踊り (前奏曲 第1集) 
シェークスピアの「真夏の夜の夢」にでてくる気まぐれでいたずらなパックが、飛んだりはねたり、の末、飛び去る情景を表す。

10.アラベスク 第1番  
アラベスクとはアラビア風の装飾を音楽で表したもの。フランスの伝統的な美しさと洗練した美しさが感じられる。

11.塔 ~パゴダ~ (版画 第1曲)
エキゾチックな響きを感じられる曲。東洋的旋法を取り入れ、当時珍しかったアジアの風景を描写している。

12.ミンストレル (前奏曲 第1集) 
ミンストレルは中世ヨーロッパにおいて宮廷に使えた職業的楽人。現在では広く軽演劇やショーの芸人のことを指す。ユーモラスな芸術的感興と、楽しく親しみのある魅力を暗示する。

13.水の精 (前奏曲 第2集)
いたずら好きで、踊ったり、泳いだり、歌ったりしながら人間を誘惑します。気まぐれで愛らしいところがあると同時に、不気味さも持っている。

14.牧神の午後への前奏曲
管弦楽作品の名曲。オーケストラでは「パンの笛」を表したフルートが重要な役割を担う。ギリシャ神話の半獣神パンが昼寝の最中にニンフ(妖精)に官能的に思いを寄せ、夢想に耽る様子のマラルメの詩「半獣神の午後」からの着想。今日演奏するのはボーウィックによる編曲。楽譜は4段で書かれている部分もあり、オーケストラのそれぞれの楽器を読みやすくピアノに置き換えて再現しようと試みる。

以上がプログラムと解説。

ピアノはベヒシュタインです。音作りが出来るピアノで、ドビュッシーの求める、また自分自身の求める音を作ります。
ただこのピアノは可能性が多いだけに、難しい。少し触っただけでボン!と鳴ります。音の立ちあがりに関してもコントロール出来るので、鋭かったり柔らかかったり。

最初は少し苦労していましたが、後半になるに連れてとても演奏も楽しくなってきました。最後はオーケストラの曲の編曲で、本当に様々な音色を出したい曲になっています。

良いピアノで出したい音が出た時の喜びは何物にも代えがたいものがあります。
こういうピアノで練習したら、バランスは聴かざるを得ないですし、ましてや鍵盤を叩くようなタッチは無くなるはずなのですが…やっぱり「音楽は音作り」ですね。

tadashi

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